イベントの価値が協賛企業や売上で決まるという「トリクルダウン」

2019.9.9更新

よねざわいずみ(フリーター全般労働組合執行委員、鳴子温泉郷ファン)

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「仙台プライドジャパン」公式Twitterアカウントの、この投稿。

この公式アカウント、あまり投稿がなされないが、以下、投稿を投稿日と内容で分析する。

そもそも、4月にはすでに行政への「後援」申請を提出しながら、開催まで2ヶ月未満となった7月末が初ツイート。
もちろんそのことは、準備の遅延などいろいろな要因が考えられ、そのことじたいはいっさい非難に値しない。
が、筆者(よねざわ)が注目するのは、その後の時系列である。

私たちの公開質問状への回答も「月末までお待ちを」とされた上でそれを大きく越える9月4日になされているが、まさにこの日に、公式アカウントとしての積極的な発信がはじめて行われている(小浜さんによるインタビューは、インタビューの「受け」なので除く)。
そしてそのわずか4日後に、私たちへの悪罵、まるで5ちゃんねらーと見まがうレッテル貼りからの「論破」宣言という、公式アカウントの「ポジティブ」コンセプトを自ら全否定するような書き込みも行われた。

このことからわかるのは、主催者がなによりも「イベント準備」を最優先し、そのめどがたったと自ら言明した9月4日からは参加者とも向き合うようになった、という優先順位である。
ゆいいつ、パレード申し込みについては参加者向けの発信であるが、これも「もう1ヶ月しかないから出さざるを得ない」という、準備不足・考慮不足・配慮不足の現れとして認識できるものである。

そして冒頭に挙げたツイートは、まさに、「参加者がどう盛り上がるか?」という参加者ファーストではなく、「出店数、協賛企業数、イベント規模」という「規模の大きさ、企業の多さ」こそが「盛り上がりなんだ」という箱ファースト思想なのである。

もういちど、プライドパレードの歴史を思い出してほしい。主催者が大好きな「日本国内の事情」だけでもよいから振り返ってほしい。
たとえば、たった3人からはじまり、年々大きくなり沿道からの支持・声援も増え続けてきた、同じ東北の青森レインボーパレード。撮影可能な隊列と撮影禁止の隊列を分け、仮装が必要な参加者に対して準備を提供している。
徹底した参加者ファーストである。
そしてそれは、「参加者のプライドを掲げる」という、本来の、かつ当然の、プライドパレードの姿である。 (ちなみに、「差別を許さない!」とはっきりアピールが行われてきたが、沿道のアライは増え続けている)

これに対し、「仙台プライドジャパン」はどうだろうか。
「企業が賛同すれば成功」「出店数が多ければ成功」「規模が大きければ成功」であり、いっぽうで、参加者の個人情報の扱いは「聞かれたから答える」。
主催者が優先順位をどうつけているかは明らかではないか。

そういえば、まさに商業主義の権化たる世界の新自由主義者どもは、「富める者から富が滴り落ちて貧しき者にも分配がある」などと主張してきた。いわゆるトリクルダウンである。
「イベントの協賛企業が多い」「出店数が多い」「規模が大きい」ことによって、参加者のプライドが満たされていく、そんな主催者の思惑と一致している。
まさか、「「プライド」を自称しつつ、参加者のプライドは完全無視」のはずはさすがになかろう!
つまり、主催者は「プライドトリクルダウン論者」ということになる。

しかし考えてみてほしい。「イベントの規模が大きい」「イベントが商業的に成功した」ということは、それは参加者全員ではなく、運営者、もっといえば「目の下にクマをつくりながら奔走した主催者」の商業的手腕が実を結んだ、ということにしかならない。
そんな「俺すごい」主催者のもとに集まってきた参加者は、その「頭数」としてだけ、イベントの成功への協力とされるのである。「イベントの規模を満たす」「出店の売上が立つ」ということへの直接の貢献として、である。
まさに、主催者が参加者に対し「プライドの雨を降らせた」という構図である。

本家のトリクルダウンはいまや、「経済成長や開発を推進するための国際機関」であるOECDによってすら、否定的に検証されている。
頭数として数えられることで「プライドを浴びられるぞ」という上からの「プライドトリクルダウン」は、はたしてどう総括されていくのであろうか。

なお、ここで誤解してほしくないのは、「イベントを赤字にしない」という努力じたいは、「商業主義」というわけではなく、むしろ積極的に求められているのだ、という事実についてである。
赤字のままのイベントがどうなるのか。かつての市民運動の一部にみられるように、持続性を失ってしまい、さらにごく一部ではあるが「資金を供給する者の声が通る」という最悪の非民主的状態に陥ってしまうおそれすらある。 イベントの協賛企業を集め、出店者を求めることは、いまや市民運動・反原発運動でも積極的に行われていることであり、持続性のためには必要不可欠である。
そしてその協賛企業や出店者は、イベントの趣旨に反しない限り、そのイベントに参加したことを「利用」して、なんらかの儲けを出すことも、当然認められるべきである。

ただ、その順番の問題である。
参加者のプライドは、空からも、まして主催者や協賛企業から降ってくるものではなく、自らが感じ表明するものである。
そしてLGBTが、日常で感じている自らのプライドへの圧迫を訴え、そこからの解放を訴える。それがプライド・パレードである。

LGBT関連のビジネスは、あくまでもそのプライドの塊の後塵を拝しながら、行われるべきである。


【サーバー提供】 合資会社ダブルエスエフ 代表社員 よねざわいずみ